
2月1日から14日まで松屋銀座で開かれる「Leather Crafy Fair 2023」に出品するアフリカンパドックとアザラシの毛付き革で仕上げたスツール「Vera」。
一昨年のある日、親しくしてもらっているデザイナーさんから「知り合いの問屋さんが在庫を整理したい」と言っているので見に行かないか、と話を頂いた。
せっかくのお誘いなので「行きまーす!」と返事。
その問屋さんはメインには婦人靴用の革やファブリックをヨーロッパから仕入れていたが、コロナの影響で仕入れに行けなくなり、商売がしにくくなってしまったらしい。
そんな中でも、やれることはやっていこうという事で、倉庫を整理することにしたとのこと。
何人かで連れ立って泪橋からほど近い倉庫を訪ねた。
「あしたのジョーの舞台は実在している土地なんやねんなぁ」ときょろきょろしている内に、倉庫に着き、入れてもらうと、そこにはヨーロッパのタンナーを中心に様々な種類の革が棚に積まれていた。
婦人靴用がメインなので、柔らかみのある素材が多い。
ふんわりした座り心地の椅子を作りたいと思っていたので、これはいい機会だと思い、選んでいく。
その中でも「これはいい!」と感嘆したのが、このアザラシの革。


肌触りが本当に心地よい。
毛の一本一本は太さもあって、しっかりした感じなのだけど、とても柔らかい。
艶の感じもお見事。
仕上げ方もまだ全然決まっていなかったけれど、倉庫の棚で出番を待たすのはあまりに勿体ないし、せっかく出逢ったのだからと、購入させてもらった。
そこから何度も試作を重ねながら、クッション量を調整し、下地の成型合板の処理や縫製方法を模索し、このカタチにしました。
クッション材4種類、5層構成で、座るとゆっくりと沈み込むような感じにしました。
ゆったり座っている感じを出すために、通常のVeraより座面は一回り大きく
。
裏側は、摩耗性はそんなに強くないけれど、手触りの気持ちよい羊革。
フチはサドルプルアップレザーを使用し、一針一針、手で縫い上げています。


座面にグルリと巻き込んで張ると角が出来てしまい、膝の裏などが擦れて、毛が抜けやすくなるので、出来るだけ摩擦が起きないよう、このような仕上げ方にしてみました。
縫い込むのにかなり時間は掛かるけど、幾分かは効果があるのではないかと期待している。
このアザラシ革は、ノルウェー産。
手で触れていると、寒い地域で自然と向き合いながら、真摯に日々と向き合い、世代を重ねて繋げてきたことが感じられます。
不真面目な生活から、こんな良質なモノは生まれない。
ただ19世紀から20世紀頃には北欧、北米、そして日本も含め世界的に商業捕獲が多く行われ、皮だけ剥いで肉は利用していなかった過去もあるとの事。
特に1950年頃から1970年頃には商業捕獲によって、第二次世界大戦直後と比較して半数になってしまうほど急激に減少したそう。
現在は捕獲高割当て保全の取り組みによって数を戻しているとの事だが、実際の捕獲状況や様々なデータを確認し、勉強しながら進めていきたいと思います。
出来れば現地にも行ってみたい。
アザラシと現地の人々と商業とのバランスを見て、著しく崩れている箇所があるのなら、使用は控えようと思います。
寒い海で生きるために毛はとても密に生えています。
それでも、使用していく内に切れたり抜けたりしていくと思います。
密度を見る限り、結構な期間使えると思うのですが、はっきりとは分かりません。
この辺りも勉強しながら進めていきたいと思います。
毛が抜けて貧相な感じになってしまった時は、素材を変えての張替えもできます。
カーフ、鹿革、山羊革、カンガルー革など柔らかい素材も用意していますし、座面から替えて、タンニン鞣しのサドルプルアップやブッテーロ、クードゥー仕上げにすることも可能です。
使用可能期間など未知数な所もありますが、肌触りと艶感は素晴らしいので、ご興味のある方はご連絡下さい。
サンプルを送ることも可能です。
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