自然と共生する未来に向けて。
長い間、ヒトは木を使って暮らしてきました。
燃やして暖をとり、食事を作り。
また、青銅器や鉄器を鋳造する熱源にも利用してきた。
材料として家を建て、様々な道具を作り。
身近な木という存在の長所や魅力を引き出しながら様々な文化を築いてきました。
しかし、木という生き物の成長スピードと消費のバランスを見て見ぬふりをしてきた面もあります。
少しづつ荒れてきていた環境は、産業革命によってここ200年でそのスピードを急速に上げてきています。
市場に出てくる材木の質は低下し続けており、すでに限界が視界に入っている状態です。
森林を荒廃させると土壌で生きている菌にも影響が出ます。
樹木の多くは菌根菌と呼ばれると共生しています。
木と菌根菌は根の部分で繋がり、木は光合成で作った糖分を菌に供給し、菌はそのエネルギー源を使い菌糸を土の中で大きく広げ、土壌の中のリンなどの養分を木へと供給しています。
森の木を皆伐した後、期間共生する相手がいない中でどれくらいの期間と量の菌が土壌で生きられるかはまだ研究段階でよく分かっていません。
皆伐地に植樹をしても上手く育たないのは、共生関係が成り立っていないので、必要な養分を得られず枯れてしまっているのかもしれません。
人にとっては、大事な季節の食文化を失う可能性もあります。
マツタケは文字通りマツ科の、トリュフはナラやブナ、カバノキの、ホンシメジは針葉樹と広葉樹の混生する雑木林の菌根菌の子実体です。
この崩れたバランスを少しづつでもよくするために出来ることで一番簡単なのは、あるものを出来るだけ長く使うということ。
作り手にまず出来ることは、使ってくれる方が愛用品としてくれる存在を生み出す事。
色んな存在が上手く共生できるよう、精一杯の思いを込めながら、日々制作に向かっています。
100年、200年後のアンティークを、今、作る。
木で家具という道具を作るの上で大事にしていること。
強度、機能、カタチ。
それが上手く調和していること。
素材のもつ魅力を可能な限り引きだすこと。
壊れるまでずっと使い続けたい、そう思えるモノを作りたい。
過去をなぞるだけでは面白くない。
でも、奇抜なだけではすぐに飽きてしまう。
短期的なトレンドではなく、時代をまっとう出来るスタイルを作りたい。
そのようなスタイルも、ずっと同じではつまらないので、自分のスタイルがずっと続いて欲しいとも思わない。
素材の使用寿命が切れる頃に入れ替わってくれたらいいなと思う。
100年後、200年後、もっと先の未来、世界のどこかで、「長く使えるものを作ったヤツがいたんだな」と感じてもらえたら、作り手としてこれほど嬉しいことはない。
@patwoodworking